「山城国藤原金定」と古拙な書体で銘を切り、木瓜形の鉄地鐔に人物風景を彫るのを得意としております。本作は同作中でも、絵風鐔の開祖である金家に近い名品です。なお絵風鐔とは、絵画的表現を鐔に破綻なく取り入れている作風であり、単純な文様や図案的なパターンにとどまっていた、それまでの鐔のデザインを一新する新しい表現となりました。鐔という限られた装飾空間に絵画的な表現を入れる為に、鐔の形を丸形や撫角形といった幾何学的なものの他にも、木瓜形や拳形など変わり形のものも自由に用いています。地鉄はすべて鍛錬されて強靭な薄めの鉄で、図柄は力強い鋤彫りで表現され、そこに最小限の金、銀、真鍮、銅などの色金を象嵌することで、鉄地のモノトーンの世界に色彩対比の効果を出すなど様々な表現方法が見られます。そしてこれは、幕末の写実的な表現へとつながっていき、最後の名工として加納夏雄などが知られます。
張果老図鐔 銘 山城国藤原金定
江戸初期 山城 保存刀装具 箱付 25万円
縦8.9cm 横8.2cm 切羽台厚み0.45cm大きさ4.2cm