長寸の名刀を多く襲蔵していた上杉家伝来の重要美術品の長船光長の太刀です。「古今銘尽」の長船物之系図にて光長は真長の子で長重、長義の父としており、今村長賀先生の評には「二代長光の風情ありて余程味ひあり、帽子張出し直刃帽子、真長の如し、地鉄は至って精美に、匂い口景光の如し」とあります。光長在銘の作はいたって稀少であり、鎌倉時代の太刀姿をとどめている生ぶで腰反りの深い長寸の姿は、貫禄十分にして品格が備わっております。刃紋は直ぐ調の穏やかな部分は父真長を、丁子が目立って出入りがある部分は叔父長光の後半の作を想わせるものがあり、地には乱れ映りがまことに鮮明に表れています。南北朝時代初期の長船物を研究する上で欠かすことができない作品で、上杉家刀剣台帳の乾第四十二号に所載されております。また佩表の腰元に「八幡大菩薩」の神号が彫られており、名物「謙信景光」同様に奉納のために作刀されたと考えられております。
(所載書物) 鑑刀随録 日本刀随感 刀剣美術第591号 大名家秘蔵の名刀展カタログ 上杉家の名刀と三十五腰カタログ