一宮長常の若年銘と伝わる雪山銘のまるで獅子が飛び出てくるかのように見える素晴らしい鐔です。長常銘とは手法が異なり、真鍮地に腐らし仕上げなどを用いています。
一宮長常は越前の敦賀の生まれで、上京し後藤宗家上代の彫技を「後藤秘書」に書いた後藤隆乗の弟子である保井高長に師事し彫金を学び、またさらに絵画を円山応挙の師と知られる石田幽汀に学んで写生力を養っています。写生彫刻を主に制作し、明和7年(1770年)に越前大掾を受領、江戸の横谷宗珉と並び称されました。作品は宗珉と同じく小柄、笄、目貫、縁頭等が多く、鐔の作品は少なくとても貴重です。